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懐かしタニス・リーのファンタジーSFだ。中学の時夢中になった。
ロマンチックな物語にショーペンハウアーのことわざやシェイクスピア、光だの星だの闇だのと言ったキーワードをちりばめて、中坊やティーンエイジャーにばらまくのはどういうことなのかw
#この時からマインドコントロールが始まっている
テクノロジーによって人間以上の存在を生み出す、という物語が好きだねえ・・・メーソンは。
主人公はキリストもしくはルシファーを暗示し、ヒロインはその花嫁、という構造です。
おとぎ話でいうとシンデレラ、白雪姫、桃太郎、一寸法師、その他もろもろだいたいこれを踏襲した物語ね。
人類に光=知識を与えたのはルシファーなんだから信仰するよ! キリスト求めすぎて待ちきれないからええい、もう作っちゃえ!→メガテンⅡとかね
テクノロジーによって創られたのは飽くまで被造物だから神じゃないのよ。
人間に仕える天使。
先週「irobot」見たけど「人間は未熟です」「不完全な人間を守るために私たちは人を殺します」といって反乱を起こすロボットの群れをそのプロトタイプであるサニーが鎮圧するんだけど2001年宇宙の旅のラストシーンを思わせてスリリングで面白かったわw
氾濫の首謀者である狂ったプログラム viki を破壊するために中枢に降りていくシーン、999の惑星メーテルの中心部そっくりで感動した。
サニーは善ロボットで人間的な感情をインプットされていて良心がある。
ブレードランナーの世界観がここにつながるのねと思った。
解放者として砂漠に踏み出すサニー。モーセが砂漠で指導者になったみたいに。
(ボトムズのキリコも、砂漠を横断した。)
架空のロボットを描く事によって神性とか聖性とか愛とか生命の大切さとかを描き出していたこのころのSF作品。
スターウォーズでハンソロが氷漬けから復活していたころ。
そしてレイア姫との愛を謳っていたころ。
自分はタニス・リーにのめりこんだ。
銀色の恋人は10代前半の女の子の読者層にセンセーションを巻き起こしたらしい。
みなシルヴァーに恋をし、主人公のジェーンに自分を重ね合わせてきていたんだと思う。
舞台はカタストロフィが起こった後の地球、ブレードランナーの荒廃した世界に少し似ている。
あそこよりはアッパークラスの、欧州か北米の高級住宅街と言ったところか。
主人公の家は、何不自由のない、保護された、退屈な暮らし、物質的には豊かな、だけど母親の望まないことは何一つ許されることはない、主人公にとっては完璧な牢獄である。
着るものから食べ物、読み物一つとっても主人公のために母親が選んだものである。そのチョイスは素晴らしいものであったかもしれないが、実は「母親の子供」「完璧な娘」の範疇からはみ出さないように、外見を決める細胞のDNAまでプログラミングされ、髪や目の色、身長体重まで決められて、コンプレックスを与えマインドコントロールされていたのである。
主人公のジェーンは裕福な美少女なのだが、自分を不器用な凡人だと思い込んでいる。
話の終盤、このプログラミングが解けて、主人公が本来父親から受け継いだより優れた形質(外見的には高い身長やプラチナブロンド、美声や内面的には独立精神、決断力や実行力など)を取り戻し、それを現していく。
さあ、主人公を閉じ込め自分の意に従わせていた母親の名前は「Demeta(Demeter)」である。作中でも指摘されているが地母神デメテルである。主人公は恋に落ちたロボット、シルヴァーと共に女神に反逆し、逃れ、新天地で彼らの幸せを築いていこうとする物語である。
数年前見たアニメ映画銀河鉄道999のプロットにそっくり。
鉄郎とシルヴァー、金属繋がり。
メーテルもジェーンもお互いに命懸けで彼らを愛し、守ろうとしているところも同じ。
メーテルの体はプロメシュームから与えられた「宇宙で一番美しい体」
ジェーンも彼女の個性に合わせてその人を一番美しく見せる肉体を保てるように処方された薬を飲んでいて、その体型は「ヴィーナス型」である。
鉄郎はプロメシュームに絞殺されそうになり、シルヴァーは不良品として解体されそうになるのを辛くも救われる。しかしこの後のシルヴァー争奪戦の挙句に、二人は再び離れ離れに。
ジェーンのいちずな愛が・・・いじらしくてシルヴァーとのふれあいで彼女の心が解放されていくのが感動でもう涙涙でしたな。
しかし、少女が捧げる無機物への愛は何を意味しているのだろうか。
<ルシファーに捧げられた花嫁>
作中、星に恋する少女のおとぎ話が登場する。
〝私はあなたよりはるかに年を取っている・・・”
高い塔の上で星に話しかける乙女は星に捧げられた巫女である。
星とは明けの明星、ルシファーである。
作中で主人公もシルヴァーをルシファーと呼んでいる。
銀色の恋人は、少女がルシファーに恋し、花嫁になる話であるともいえるのである。
二人はともに暮らしていくうえで、どんどん人間らしくなっていく。
そして引き裂かれ・・・シルヴァーは死ぬが、最後に魂を与えられて人になる。
「銀」というのは星の輝きの事なのだと思った。。。
例えば白雪姫はガラスの棺で王子が現れるまでじっと待っている。眠りの森の美女も魔女に呪われ城ごと茨で覆われ時間の流れから取り残されてしまう。
仮死状態の美少女は王子の口づけで目覚め、生き返る。
こうしたおとぎ話の主人公は試練を超えて一度は死んで棺の中に入るが、みなキリストの接吻を受けて死から蘇る物語だ。
ドラゴンを退治するとドラゴンが守っていた塔には必ず宝物と美しいお姫様が待っている。
ドラゴン退治の若者は姫と結婚して王国を受け継ぎ、めでたしめでたしである。
桃太郎が鬼ヶ島の鬼たちの城に乗り込むと、その深奥部には美しい姫が囚われていた。
この姫は鬼たちに大切に育てられ、守られていた。おそらく神の生贄/花嫁として子供の時に浚われてきたのだろう。
桃太郎は宝と共にこの姫を連れ帰り、結婚する。
銀色・・の場合は少女が王子を見出す物語だ。
初めてパーティの広場でGreen sleeves を弾き語りで歌うシルヴァーに一目ぼれ。
この時主人公は緑色の和服によく似たガウンをまとっていた。意味深です。
シルヴァーと過ごした主人公の友人は
「こいつはキリストか?!」
と言っていた。(序盤、クローヴィスがエレベーターの中で)
シルヴァーが誰にでも優しい(のではないかと邪推して)主人公は八つ当たりをするのですがシルヴァーは主人公に何度も誠実な愛を誓う。
それでもシルヴァーがいなくなってしまうのを恐れて泣く主人公ジェーン・・・甘々ですな。
当時はあの甘さが、せつなくてよかったと思う。
ヒロインジェーンにすればあなたが神でも悪魔でも何でもいい、永遠に愛しますフィアナこそわが命フィアナこそ我がさだめなのだ。
ここまでつらつら書いておいてなんだが、実を言うと初見ではシルヴァーの姿に親しみを感じなかった。
あの評判の悪いカバー絵に描かれた鉄さび色の神をした鉛色の人物を見て何ぞ・・・と思ったのは私だけではあるまい。
逆に、女の子らしく描かれていた主人公は、あれでいいんじゃないかと思った。
ロボットに恋してしまう、平和で裕福で恵まれた無知な可愛い少女はまんま日本の少女漫画のキャラクターのイメージである。ピッタリではないか。何が気に入らなくて皆あんなに叩くのか。
英語版のウィキで見るシルヴァーはおっさん臭くてwww
シルヴァーだけは描きなおして欲しいなと思う。美ということが分からないのになんで描くんだメリケンのイラストレーターはwww
当時はアニメや漫画や映画に出てくる人造人間的な主人公は見栄えのするキャラばかりでキリコやイプシロンに比べるとシルヴァーの見た目にはなじめなかった。
少年と青年の間の年頃の整った中性的な顔とボディは明るい銀色で
バーガンディ(ブルゴーニュワイン)色の髪は澄んだ紫紅色のワインカラーで
目は琥珀、虹彩はゼリーみたいな黄金色で
目を伏せて夢見るようにジェーンを見る目るよりも、うっとりしたジェーンの目つきとは対照的に、こちらを鋭く見ているほうがシルヴァーには似合うような気がする。
ジェーンをどぎまぎさせたまっすぐで鋭い視線を投げかけてほしいw
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